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東京地方裁判所 昭和39年(レ)126号 判決 1964年6月29日

控訴人 有限会社新宿みよし民謡酒場

右代表者代表取締役 前田ギン子

同 岡栄

右訴訟代理人弁護士 高畠春二

同 犀川久平

同 松野祐裔

被控訴人 呂芳庭

右訴訟代理人弁護士 宮田光秀

同 坂晋

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

一、控訴人主張の承継執行文が付与された事実は当事者間に争いがない。

二、控訴人の異議事由第一に対する判断。

この異議事由は民事訴訟法第五二二条の異議として主張すべきものであるけれども、同条の異議は同法第五四六条の異議の訴と同様、執行文付与の過程における瑕疵を攻撃するものであるから、審理の方式、手続のより慎重な後者において、後者の異議と併せて主張することができると解することが、強制執行の迅速性を考慮して、相当であると考える。

そこで控訴人の主張について判断するが、≪証拠省略≫によれば本件和解調書の目的物件である建物について昭和三四年三月二七日被控訴人のために所有権取得登記がなされていることが明らかであり、承継執行文付与の時控訴人の主張する証明書の欠缺があつたとしても右欠缺は補正されたものであるから、控訴人の右主張は理由がない。

三、控訴人の異議事由第二乃至第四に対する判断。

≪証拠省略≫によれば控訴人が主張する異議の原因は、いずれも同人が被控訴人に対して起した請求異議事件(第一審新宿簡易裁判所昭和三四年(ハ)第三二八号、第二審東京地方裁判所昭和三七年(レ)第四五号)において控訴人が主張した異議の原因と同一であることが認められる。従つて同人は右請求異議の訴においてその異議の一つとして被控訴人の承継を争つたことになる。

民事訴訟法第五四六条の異議を第五四五条の異議の一事由として主張しうることは判例が認めて来たところであるが、一般的に右二つの異議についていわゆる同時強制があるか否かは別として、少なくとも第五四五条の訴において第五四六条の異議を主張した場合は、もはや同条および第五四五条第三項によつて右の異議を理由とする第五四六条の訴は起せないものと解するのが相当である。そうでないとすると判決手続の迅速、適正と相まつて紛争解決のために不可欠な執行の迅速性は、全く無視されることとなろう。

従つて控訴人の異議事由第二乃至第四の主張による被控訴人の承継を争う本訴は不適法として却下されるべきである。

三、むすび。

以上のとおりであるから控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は結局相当であり本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 滝田薫 前川鉄郎)

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